相手からの申し出だったのと、人目を気にせず話をするのに良さそうかもと思って、買い物デートは相手に車を出して貰うことにした。
ただ、もともと強引に捻り出した「買い物」は当然のようにあっさり終えて、さぁじゃあじっくり話し合いを、と思ったところで次の目的地をどうするか聞かれて迷う。駐車場に停めた車の中で話せばいいかと思っていたけど、それじゃダメなんだろうか。
「ダメ、ではないけど。つか今のは、お前の家まで荷物運ぼうか、っていう提案だったんだけど」
「あ、次の目的地ってそういう……」
重いものも嵩張るものも買ってないので、送ってもらう必要はない。車を出してもらった理由はそこじゃない。
必要ないですと言えば、わかったと相手も即座に了承する。同時に、なんのために車を出してもらったかも思い出したらしい。
「話し合う時間が必要だろとは確かに言ったけど、そんな話すことないよなとも思ってんだよね。だって俺が恋人で不都合とかある?」
身近なとこで欲しかったんでしょ、恋人。と言われてしまうと、そうだけど、とは思うんだけど。
「じゃあとりあえず俺の家向かうのでいい?」
「え、なんで!?」
急に話が変わったのと、想定外すぎる次の目的地に驚いた。恋人が欲しい自身の気持ちに向き合ってる場合じゃない。
「家送らなくていいみたいだし、他に行きたいとこがあるわけでもなさそうだし」
「いやいや、ちょ、それは。えと時間下さい」
行きたいとこ探しますって言ったら、あからさまに避けるねって苦笑されてしまった。
「だって家にお邪魔したら結局またエッチなことする流れになりそうで」
「うん。でもそれ、何か問題ある?」
恋人が2週間ぶりに二人きりになってヤらないとかある? と聞かれても困る。だって恋人と2週間ぶりの恋人らしい時間、なんてウキウキと期待する気持ちが全然ない。
「だから! そもそも! 2週間ぶりの逢瀬、みたいに思ってんのそっちだけなんですって」
なるほど、って返ってきたら、理解はしてくれたらしい。
「じゃあ適当にドライブでもするか、デートっぽく。さすがにこのままここで話し合うよりいいだろ」
さすがにそれを引き止める言葉は持っていなかったので、車はあっさり動き出す。
「でさ、話戻すけど」
しばらくして、相手がそう切り出してくる。
「どこに戻るんですか?」
「俺が恋人で不都合があるかって話」
そういや相手の家に向かうのを阻止するやり取りの前はそんな話題だったっけ。
「むしろかなり都合のいい相手だろ、って思ってんだけど」
「でもこの2週間、恋人っぽいこと何もなかったですけど?」
付き合ってるって認識だったんですよね? と確かめてしまえば、職場でゲイバレするのは嫌だろうと思ってただけと返ってきた。こちらからのそれっぽい行動が一切ないのも、同様の理由と思ってたらしい。
「まさか恋人になった認識がなかったせいだとはな。まぁプライベートの連絡先を交換しそこねてたのと、それに気づかず結果的に2週間も放置になったのはこっちのミスだが」
会社でも恋人っぽいやり取りが必要? と聞かれて、慌てて首を横に振りつつ否定した。身近なとこで恋人が欲しいのは事実だけど、だからって職場バレなんか気にしない、という心境にはどうしたってなれそうにない。
それに、校内でエロいことして退学になった過去持ち相手に、会社でも恋人扱いしてなんて言ったら、何されるかわかったもんじゃない。せっかく入った会社なんだから、あまり変な理由で退職したくはない。
「逆に言えば、俺の方からの会社バレはないって言い切れるくらい、完璧に隠し通せるのが証明されたんじゃないか?」
会社にゲイバレしないし、ちゃんとゴム使うし、自分の快楽だけ優先しないし、むしろお前がイキまくりな気持ちぃセックスできる、身近な恋人だぞ。これ以上都合がいい相手とか居る? と自信満々に言い切られてしまうと否定はしづらい。しづらいんだけど、だからって歓迎出来るかは別だ。
恋人が出来たってワクワク感はないし、どうしたって不安が大きい。
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